橋本治さん、逝く。
インターネットのニュースで、橋本治さんが亡くなられた事を知った。
近年、難病で入院されたことは知っていたし、最近の著作をいくつか読んで、文章に力がないことがずっと気になっていた。
私の物の考え方の基礎は、この人から教えてもらったといっても過言ではなくて、20代から30代にかけて、本当によく読んだ。
一番好きだったのは、マドラ出版の「ああでもなくこうでもなく」シリーズで、新刊が出るたびに一晩かけて一気に読み、そして再読、また再読…と繰り返したのを思い出す。
「美しいとは何か」「美男へのレッスン」「貞女論」「大江戸歌舞伎はこんなもの」「風雅虎の巻」「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」「三島由紀夫とは何者だったか」「恋愛論」「パンセ」「アストロモモンガ」「雨の温州みかん姫」、たくさん売れて、いちファンとして心から喜んだ「上司は思いつきで物を言う」………覚えているままに書いているので、書名や表記が間違っているかもしれません。
インターネットで調べれば正確な情報が出てくるでしょうけど、そうするのは何か違う気がするので、あえて記憶の中のタイトルのままにしておきたいと思います。
心よりご冥福をお祈りします。
本当にありがとうございました。
ジャケ買い
CDジャケットの絵に一目惚れして取り寄せた「OSCAR PETERSON PLAYS THE COLE PORTER SONG BOOK」。
かけてみたらすごく良くて、家にいる時はずっと流している。
Merle Shoeという人の絵だということと、オスカー・ピーターソンのアルバムジャケットのアートワークを手掛けている人だということは分かったが、インターネットで調べてもそれ以上の情報は出てこない。
このジャケットの原画、あったら買いたいなぁ。
死と時間について考えるー小瀬村真美展
北品川の原美術館で開催されている小瀬村真美展へ。
「薔」というタイトルのインスタレーションがいちばん印象深かった。
スペインの画家スルバランの静物画を模して実物のレモンやオレンジを配置したセットを組んで、朽ちていく過程をデジタルカメラでインターバル撮影したものを補正、加工してつなぎ合わせた作品で、ショートフィルムのようでも絵画のようでもある。
解説文の中で作者は「静物画を模してセットを組んだ際、わたしは絵画の空間は日常空間とは全く違うものだという事を感じていた。セットはなかなか基の絵画のように美しい形を自然には作る事ができず、オレンジやその葉をワイヤーで固定しなければならなかった。机自体もカメラに対して後ろ側が少し上がるように傾斜をつけた。」と述べている。
実際に再現しようとしてみなければ、きっと分からなかったことなのだろう。小説を書き写してみるのと少し似ている部分があるだろうか。見ている、読んでいるだけでは絶対に分からないこと、というのがあるのだ、と思った。
そして朽ちていく果物の映像を目で追いながら、なにかと似ている…と考えていて、思い出した。
あ、あれだ、リンチが自分の半生を語ったドキュメンタリー「デヴィッド・リンチ:アートライフ」。
地下のアトリエで、小動物の死骸などの腐敗していくさまを観察していた、若かりし頃のリンチ。
訪れた父親にコレクションを披露し、賞賛を期待して嬉々として振り向くと、そこには顔を曇らせた父親の姿が、そして「お前は結婚して子供を作らない方がいい」と言われた…という思い出を語るシーンがあった。
「死」と「時間」。芸術を志す人が共通して惹かれるテーマなのかもしれない。
また、展示されているオブジェクトの中にアンダーラインを引いた本があり、後で図録で調べたら、ポール・オースターの詩集「消失」とあった。
もう絶版になっていたが中古で売っていたので、内容をもう一度じっくり読みたいと思い、さっそく取り寄せてみた。
ごあいさつ
読んだもの、観たもの、聴いたもの、考えたこと、日々のできごとなどを備忘録を兼ねて残しておきたいと思っています。 たまに覗いていただけると嬉しいです。