ページに落ちる翳

日々のできごと、本のこと。

ポール・オースター詩集『消失』より

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できるかぎり単純なことを言うこと。何であれ、たまたま見つけたものより前へ行かないこと。たとえば、この風景からはじめること。ごく手近にあるいろいろなものを記録しておくこと。まるで、眼前の小さな世界の中にでも自分を越える生のイメージを見つけられるかもしれないかのように。まるで、ある意味では次のようなことを完全には理解できないかのようにーー自分の生のどれを取っても他のどれかと繋がっていて、それが今度はわたしを世界全体と繋げているなどということを。しかもそれは心にぼんやりと浮かぶ途方もない世界で、知ることもできなければ、命取りにさえなるものなのだから。


去年の夏に訪れた小瀬村真美展で展示されていた、ポール・オースターの詩集『消失』の中の「白い空間」から、一番惹かれた箇所を引用した。展示されていたのは、同じ詩の別の箇所だったのだが、今の私に一番響いたのがこの部分だった。

「たまたま見つけたものより前に」、つい行きがちな私にとっての戒めとしても載せておきたい。
ブログを始めたのも、何日か経ったらすぐに忘れてしまいそうな日々の出来事や、ふと頭に浮かんだまましばらく離れない、昔読んだ本の一節や、なぜかずっと印象に残っている誰かの言葉といった些細な物事を、文字にして残しておきたいという気持ちがあったからで、そういう事をこれから少しずつ書いていきたいと思っています。